2013年8月1日
婦人乃友
「みんな一緒に生きていくために」






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婦人友乃会



「みんな一緒に生きていくために」―10周年記念―


インターネットを使い、世界中の子どもたちが出会い、伝え合い、つながることができる遊び場「ユニバーサル・プレイグラウンド」を展開しているNPO法人パンゲア*が今年、設立10周年を迎えました。パンゲアの「今」と「これから」について、聞きました。

*パンゲア…ギリシャ語で「すべての陸地」という意味。現在の諸大陸が分裂する前、ひとつの大きな大陸だったという仮説があり、その巨大大陸の名前。

9.11で奇跡的に助かった命 パンゲアの設立のきっかけは、2001年の9・11。ハイジャックされた飛行機に搭乗予定だった森由美子さんと高崎俊之さんは、打ち合わせのスケジュール変更により、搭乗を3日前にキャンセル。命が助かった。「その後のアラブ諸国やイスラム諸国への人びとの反応や差別を見て、違う文化や慣習へ心を開けるようになるために、何かしなければと思ったのです」と森さんは語る。

2003年、森さんは高崎さんと共に最先端のコンピューター技術を駆使して、世界各国の子どもたちがつながる場を提供しようと、パンゲアを設立(本誌2006年11月号でも紹介)、当時のオーストリア、ケニア、日本、韓国に、その後マレーシアも加わり、設立10年目を迎えた現在、5カ国9拠点に広がった。
小学3年生から中学3年生の子どもたちが月に1~2度集まり、パンゲアネットというインターネット上の空間を利用して、国内外の拠点の子どもたちとクイズや自己紹介などを通してコミュニケーションをとる活動をしている。今年の3月までの延べ参加人数は約6500人。ファシリテーターなど、ボランティアで活動する人は147人にのぼる。

言葉が分からなくても通じ合える

「言葉が分からなくても、他の国の友達を身近に感じられるようになった」(小6女子)、「韓国のこどもも、私たちと考えることが同じなんだとおもてうれしくなる」(小6女子)、「最初はどんなところかどきどきしたけれど、スタッフもよい方で、いろいろな人とも交流ができて、たのしいことばかり」(小4男子、以上日本)など、参加者からは周りの仲間や、海外の仲間のことを意識できるようになったという感想が聞かれる。

パンゲアを巣だった子どもの中には、高校時代に自治体の募集を見て、中国やスペインに留学した子どももいる。「留学というと、英語圏を考えることが多いと思いますが、パンゲアで、最初は言葉がわからなくても考えを伝え合うことはできるという経験をしているから、中国やスペインを選んだのかもしれません」と森さん。

みんな一緒に生きていくためには パンゲアの活動を知ったパリのユネスコ本部から、パレスチアとイスラエルでパンゲアの活動ができないか」ともちかけられたが、森さんは反論した。「大人が作為的にその二国間だけで何かをしようとしても、うまくいかないと思います。各国の子どもたちの交流の中にイスラエルとパレスチナや、日中韓がたまたまある、というほうが理想的。“あの国”と大人が特定するのではなく、子ども自身がいろいろな国の子と交流することで、どこかの国だけを特別視して嫌う、というようなことはしなくなると思います。」

そうした意味からも、今後、今ある拠点を中心に、その国の近隣諸国を巻き込んで、まずは地域がつながり、それが集まって世界がつながっていけるような環境をつくりたいという構想がある。森さんは言う。「相手の国を好きになりなさい、とは言いません。社会には、そして世界にはいろいろな人たちがいるけれど、みんなが一緒に生きていくためにはどうすればいいか、子どもたちが考えるきっかけを持てれば、それが平和にもつながっていくのではと思っています。」

(菅原然子)